チョウとアリが「モールス信号」でコミュニケーション 台湾・日本などの国際チームが解明

台湾師範大学(NTNU)は、共生関係にあるチョウとアリが、音の振動を介してコミュニケーションをとっていることを解明した。2021年12月15日付発表。この研究の成果は学術誌 Scientific Reports に掲載された。

これまで昆虫の振動音が学界で大きな注目を集めることは少なかったが、この研究は生物の振動に関する「バイオトレモロジー(Biotremology)」の分野で国際的な関心を集めている。

「silverline butterfly」と呼ばれるチョウがアリと相利共生の関係にあることは古くから知られていた。これらのチョウの幼虫(larva)はアリが好む蜜を分泌する腺(gland)など、アリをひきつけて世話をさせるための好蟻性(こうぎせい:myrmecophily)の器官(organ)を持つ。しかし、さなぎ(pupa)の段階ではこのような器官を持たないため、研究者らはアリをひきつける別の仕組みがあるはずと考えていた。

そこでNTNUのユーフェン・スー(Yu-Feng Hsu)教授らを含む台湾、日本、ベルギーの研究者が参加する国際共同チームは、昆虫の行動、音響、形態を調査してチョウとアリの間の「モールス信号」を解読し、これらの昆虫が音振動信号を用いてコミュニケーションをとる方法を解明した。

台湾に多く生息するタイワンフタオツバメ(Spindasis lohita)と共生関係にあるアリを対象に研究をした結果、これらのチョウの幼虫とさなぎの両方がアリをひきつける振動信号を発し、さらにアリも腹部と腰をこすってほかのアリを呼び寄せる音信号を発することが明らかになった。2つの信号を分析した結果、これらのチョウとアリの信号の長さと主な周波数が非常に似ており、振動信号が共生関係に重要な役割を果たしていることが確認された。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

上へ戻る