台湾の科技部(MOST)は2月15日、同機関が支援した研究により、5ギガビット/秒を超えるデータエンコーディング・伝送速度が可能な2×2の緑色マイクロLEDアレイを開発したと発表した。これは可視光無線データ通信における世界最速記録となる。
研究の成果はOptica(旧称「米国光学会(Optical Society of America)」)が発行する学術誌 Photonics Research に発表され、同学会が厳選する重要論文「Spotlight on Optics」に選ばれた。
この技術により、RGBマイクロLEDのスマートディスプレイを用いて1秒以内に高精細映像信号を伝送できる超高速の光無線データストリーミングが、近い将来実現する可能性がある。
高速な緑色マイクロLEDに関する研究は、材料と設計の両方のボトルネックにより進展が遅れていた。
そこで台湾大学(NTU)のゴンルー・リン(Gong-Ru Lin)教授らによる共同研究チームは、新たに開発した設計によって「量子閉じ込めシュタルク効果(quantum-confined Stark effect)」を抑え、高密度の電流を注入した際の発光効率の低下というボトルネックを克服した。この緑色マイクロLEDは、近年開発されている高速な青色と赤色のマイクロLEDに続いて、RGBマイクロLEDアレイを用いたスマートディスプレイでの自由空間光無線通信の実現に向けた「最後の1マイル」をつなぐ可能性がある。
この論文はLighting Fidelity(LiFi)の発明者であり、可視光通信(Visible Light Communication: VLC)領域の先駆者である英エジンバラ大学(University of Edinburgh)のハラルド・ハース(Harald Haas)教授の推薦を受けた。ハース教授は「高速でスペクトル安定性が高いマイクロLEDによって可視光域で数ギガビット/秒のデータレートを達成することは、拡張現実(AR)ヘッドセット等の新たな用途への可能性を開く 」として、この研究成果を称賛した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部