AsianScientist(2022年02月15日)-オーストラリアと香港の研究チームは、T細胞は新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のオミクロン株変異型に対する有効性がこれからも期待できるという結果を発表した。
オーストラリアなどの国際研究チームはウイルスを調べ、T細胞と呼ばれる免疫細胞は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を引き起こすウイルスであるSARS-CoV-2のオミクロン変異型から体を守るのに効果的であるという結果を発表した。
ウイルスは人から人へと広がるにつれて、必然的に遺伝物質に突然変異を蓄積し、新しい変異型の出現につながっていく。SARS-CoV-2も例外ではない。デルタ株とオミクロン株という変異種が現れたとき、人々は感染の新しい波に襲われたことを感じた。
ワクチンはSARS-CoV-2を認識し、免疫応答を開始するように体に教え、病気から守るために細胞と分子を武器として集める。たとえば、B細胞によって生成された抗体はウイルススパイクタンパク質と結合し、ヒト宿主細胞に侵入する能力を中和する。
しかし、オミクロン株のスパイクタンパク質には何と30の突然変異がある。これは、以前の変異型に見られた突然変異よりもはるかに多い。研究によると、これらの突然変異は、ワクチン接種または以前のCOVID-19感染によって生成された抗体からウイルスを逃れさせる役目を持つ可能性を持ち、つまり、再感染や今までにない症例が発生する可能性が高いことを示す。
このような懸念が高まる中、香港科技大学とオーストラリアのメルボルン大学の研究者らは、別の種類の免疫細胞であるT細胞に注目した。T細胞もワクチン接種や以前の感染によって誘発され、ウイルスに感染した細胞を排除することにより、重篤な病気の予防に役立つ。
チームは1,500を超えるウイルスエピトープを分析した。ウイルスエピトープとはSARS-CoV-2タンパク質の断片であり、ワクチン接種を済ませた人またはCOVID-19から回復した人のT細胞によって認識される。オミクロン株に関連する変異を示したウイルスエピトープはわずか20%だが、T細胞により認識されるウイルスエピトープはまだ半分以上あると考えられている。さらに、もっと多くの非スパイクタンパク質をより広く分析したところ、これらのエピトープの97%以上がオミクロン株特異的変異を含まないことが明らかになった。これらを総合し、オミクロン株がT細胞免疫を逃れる可能性は減るという結論が出た。
予備研究ではあるが、研究者らはこれらの結果から、多くのオミクロン株がT細胞から逃げ出す可能性は極めて低く、ワクチンやブースターによって作り出される免疫応答は、今後もオミクロン株に対する防御に役立つと考えている。
研究者らは「オミクロン株には抗体を回避する能力があるため感染数が大幅に増加する可能性はありますが、T細胞による強力な免疫により、他の変異型と同様に、重症化に対する防御は高いと考えられます」と述べた。