台湾の中央研究院(Academia Sinica)は3月7日、ヤーフイ・チョウ(Ya-Hui Chou)博士が率いる研究チームが、嗅覚の局所介在ニューロンの結合のしかたに性差があり、交尾によっても差が生じることを明らかにしたと発表した。研究の成果は学術誌Science Advancesに掲載されている。
ニューロンの結合における多様性は、無脊椎動物から哺乳動物まで幅広い生物の神経系でみられるが、多様性が生じる仕組みや多様性の程度、機能への影響については明らかにされていない。個体内及び個体間のニューロンの多様性を評価するには、脳の半球間や異なる個体間で、同じ同定ニューロン(identified neuron)を解析する必要があるが、既存の手法ではこれが大きな課題であった。
チョウ博士らはショウジョウバエの脳に存在する抑制性の嗅覚局所介在ニューロン「TC-LN」を同定ニューロンとして標識するための遺伝子システムを構築した。
このシステムを用いて、年齢、性、交尾状態、遺伝子的背景の異なる個体群のTC-LNを解析したところ、糸球体に対する神経支配(innervation)のパターンに非常に大きな多様性がみられた。このパターンは性的二形であり、メスの求愛体験に影響されるほか、交尾後のメスの食物の摂取とも相関する。さらに、交尾により、TC-LNから特定の局所介在ニューロンへの出力結合(output connectivity)が影響を受ける。
これらの結果に基づき、研究者らは、交尾に関連するTC-LNの多様性は、食物の匂いが、摂食を調節する抑制性ネットワークによってどのように解釈されるかに影響するという見解を示している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部