米スタンフォード大学ショレンスタインアジア太平洋研究センター(APARC)は4月11日、韓国とシンガポールの高齢者の間で、学歴による体の機能状態の格差が2050年までに拡大すると予測する研究を紹介した。この研究の成果は同センターが発行する学術誌 Asian Development Review に発表された。
アジアは世界で最も急速に高齢化が進んでいる地域であり、なかでも特に進行の速度が著しい韓国やシンガポールのような国々の健康データを研究することは、高齢化社会がもたらす課題に対処することに役立つ。これには健康格差の動的な変化を理解する必要があるが、アジアの高齢者の健康を比較したこれまでの研究は、健康状態と社会人口学的特性のミクロな動態をモデル化していなかった。
APARCのシンシア・チェン(Cynthia Chen)氏とカレン・エグルストン(Karen Eggleston)氏らは、高齢者の学歴の変化や機能障害の予測における競合リスクを考慮に入れた柔軟なモデルを用いて、将来の高齢者の健康・機能面での格差の動的変化を解明した。
この研究の結果は、2015年から2050年までに高学歴の高齢者が機能障害および慢性疾患を有する割合は、低学歴の高齢者に比べて低くなることを示唆した。
例えばシンガポールでは、日常生活動作(activity of daily living:ADL)の制限を指標とする機能障害を有する割合の差は、2015年の9.5パーセントポイントから2050年までに23パーセントポイント以上(低学歴の高齢者では31.9%、大学教育を受けた高齢者では8.7%)に上昇すると予測された。韓国のモデルではこの格差がさらに大きくなると予測された。
この研究は、教育が高齢者の生活に及ぼしうる影響を浮き彫りにし、社会・医療政策の形成に重要な情報を提供している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部