メコンデルタの水没防止へダム建設計画の見直し等が必要 米UCバークレーの研究者ら

米カリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley)の研究者らによる国際共同研究チームが、メコン川(中国を源流とし、ベトナムなど東南アジア5カ国を流れる国際河川)域のデルタ地帯を水没から守るには、上流域のダムの影響を軽減し堆積物の減少を防ぐための対策を早急に講じる必要があるとの見解を示した。このコメンタリーは5月5日に学術誌Scienceに発表された。

東南アジアで最も生産量が多い農業地帯であり、1,700万人が居住するメコン川デルタは、気候変動の影響により「21世紀中にも消滅するかもしれない」と、共同執筆者の1人マット・コンドルフ(Matt Kondolf)教授は語る。

海面上昇によるデルタの浸水を防ぐには、メコン川上流域から継続的に堆積物が流れ込むことが不可欠となる。しかし、近年、再生可能エネルギーを確保するため流域の国々が盛んに建設している水力発電ダムによって、堆積物や水の流れがせき止められている。計画中のダムがすべて建設された場合、デルタに流れ込んでいた堆積物の96%がせき止められるという。さらに、建設資材などに用いられる砂の採掘や地下水の汲み上げ、堤防の建設も問題を悪化させている。

研究者らは政策立案者に向け、損害の発生を遅らせ状況を回復させるため、「堆積物が移動しやすいダムの設計」や「堆積物の採掘の規制」等の措置を推奨している。

これまでデルタの回復に向けた取り組みの多くは各国が個別に行ってきた。研究者らは、意味ある進歩を達成するには、国々や開発金融機関、開発機関、民間の関係者等の間の協調が必要であると述べている。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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