台湾大学(NTU)の研究チームは、原核生物の細胞表面にみられる「S層」の自己集合(self-assembly)を模した、人工的に合成した分子による史上最大の立方八面体を作成した。3月11日付発表。
原核生物によくみられるS層は、細胞の保護と表面相互作用において重要な役割を果たしている。S層は、自己集合により規則正しい多孔性の二次元配列を成すタンパク質サブユニットで構成される。
イーツー・チャン(Yi-Tsu Chan)教授の研究チームはバックミンスター・フラー(Buckminster Fuller)が提唱したテンセグリティ(tensegrity)(張力による統合)の概念にヒントを得て、外接球直径10ナノメートル(nm)の分子立方八面体を構成するための、配位による(coordination-driven)高精度な自己集合手法を開発した。この研究成果はS層自己集合の化学的模倣という点で大きな躍進であり、この分子立方八面体はこれまで報告された中で最大となる。
この立方八面体は76の下位構成部分から成る2層構造を持つ。中央研究院(Academia Sinica)の研究機関と共に実施したクライオ電子顕微鏡実験により、格子定数7.9 nmのS層と同様の正方配列が観察された。
この研究の成果は、ボトムアップ方式による2次元多孔性超分子材料の生成の基盤になると期待される。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部