脳波信号をAIで解釈...睡眠時無呼吸患者を優しく起こす イノベーションで在宅医療の不便解消

AsianScientist - 近年、技術の進歩により在宅医療が始まり、従来の方法に存在していた不便や不安が消えようとしている。

予約から待合室まで、多くの人にとって診療所や病院に行くことはわずらわしいことであり、少なくとも不便なものであった。実は2019年の時点で、世界の遠隔医療市場は約500億米ドル(約6兆7000億円)に成長し、オンラインで医師に相談するという在宅医療を選択する患者が増え、さらに成長を続けている。

イノベーターが肺がんなどの重大な疾病の診断や、いびきなどの一般的な問題の解決に役立つ使いやすいポータブルデバイスを開発したため、人々は自身のヘルスケアを自分で管理できるようになってきた。そのような「DIYヘルスケア」の進歩が続くにつれ、人々はこれまで以上に正確に自分の健康を管理できるようになる。

熟睡ソリューション

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによって、多くの人々が確立してきた仕事のやり方とライフスタイルは混乱に陥った。意を決してニューノーマルを受け入れようとしても、その変化はストレスとなり、多くのメンタルヘルスの問題や睡眠障害を引き起こすことがある。健康を保つためには、定期的な運動やバランスの取れた食事同様、睡眠は重要である。睡眠が乱れれば、高血圧からうつ病までさまざまな問題につながる可能性がある。

睡眠を妨げる障害の1つとして睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)が挙げられる。呼吸は一晩中停止と開始を繰り返し、質の高い睡眠を妨げ、深刻ないびきを引き起こす。残念ながら、SASは発見が難しいことで知られている。

香港では、軽量で邪魔にならない「スマート・ヒアラブル」が開発された。SASの状況を検出し、睡眠姿勢に変化があればユーザーを優しく起こすよう設計されている。さらに、ユーザーの生理学的データをスマートフォンに直接送信するのでモニタリングは簡単である。

睡眠データは貴重な医療情報も提供することができる。たとえば、睡眠中の脳の活動は、脳波 (electroencephalogram:EEG) 信号(頭皮の表面から発せられる電気的パターン)によって追跡し、モニタリングできる。脳波信号はいくつもの健康評価に役立ち、さまざまな精神的・感情的状態を調べるために利用できる。

シンガポールのイノベーターはEEG信号の力を利用して、消費電力が少なく携帯可能でブルートゥース対応のEEGウェアラブル機器と組み合わせて使える人工知能 (AI) プラットフォームを開発した。医療従事者や研究者だけでなく外部の開発者であっても、EEG信号を簡単に測定し、AIプラットフォームで信号を正確に解釈できるようになる。ユーザーは、このプラットフォームのソフトウェア開発キットを使って、疼痛(とうつう)管理、注意力トレーニング、瞑想など、脳の健康やメンタルヘルスに役立つソリューションを作成できる。

病気を効果的に見つける

DIYヘルスケアとウェアラブルの主なメリットは、病気のリスクを早期に発見できることである。肺がんなどの重篤な疾患の治療では、発見、特に早期発見が非常に重要である。だが肺がんは発見が遅れることが多く、そのことで悪い結果につながる。

多くの患者が肺がんと診断されるときには病気は進行段階にあり、予後は悪くなる。しかし、シンガポールを拠点とするイノベーターは、早期診断を推進する非侵襲的呼気検査を開発した。

患者はデバイスに息を吹き込むだけである。すると機械学習テクノロジーを備えた内蔵解析器が、がん関連の代謝活動から発生する化学物質を検出する。このデバイスを使用し、推奨治療法を実行すれば、早期肺がんの予後を最大80%改善できる。

呼吸だけでなく、皮膚も人間の健康状態に関する重要な情報を与えてくれる。しかし、従来の画像診断は、患者が実際に病院にいなければ行えないため、皮膚の自己モニタリング装置を利用できるようにすることが大きな問題だった。

近年、スマホHDカメラが登場し、遠隔医療ネットワーク運用がタイミングよく可能になったことから、皮膚分析はスマホアプリをインストールすることでできるようになり、利便性が向上してきた。英国で開発されたこの技術により、患者は自宅にいながら皮膚の健康状態を把握でき、それと同時に皮膚の専門家はさまざまな皮膚疾患を詳細に診断・管理することが可能になった。

昔ながらの検査から現代的な方式へ

例えば、性感染症の代表格であるヒトパピローマウィルス(human papillomavirus)を検出するうえで、子宮頸部細胞診(pap smears)やがん診断のための組織生検など侵襲的な昔ながらの診断技術を使ってきた病気がある。DIYヘルスケアは、これら不快感を伴う検査についても成長を続けている。

特に目を引くのは患者が自宅で簡単に尿を採取できるベルギー製尿装置である。採取されたサンプルは詳細な分析のために検査施設に送ることもできる。これは従来の方法に代わる、臨床医を必要としない便利な方法である。

臨床使用できる非侵襲的検査キットも、高齢者にとって大いに役に立つかもしれない。たとえば、アルツハイマー病は早期診断されれば適切な管理ができるが、標準的な臨床検査には副作用があり、そのため、早期検査を避ける患者もいる。だが、非侵襲的で超高感度の診断キットが香港で開発された。このキットを使用すると、痛みを伴うことなくアルツハイマー病のバイオマーカーを簡単かつ正確に検出できるので、高齢者は検査を受けようという気になるだろう。

健康状態を現代風に向上させるスマートなウェアラブルから従来の診断検査の不快感のない効果的な自己診断キットまで、DIYヘルスケアの急速な技術革新により、すべての人に手頃で利用しやすいヘルスケアが提供される。

(2022年06月24日公開)