米バイデン大統領による就任以来初のアジア歴訪(5月20~24日)について、米ブルッキングス研究所(Brookings Institute)東アジア政策研究センター(Center for East Asia Policy Studies)所長のミレヤ・ソリース(Mireya Solís)氏は、「米国のインド太平洋政策の方向と効果を評価するうえでの重要なマイルストーン」と位置付けた。
韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の姿勢と新たに発足したインド太平洋経済枠組み(IPEF)に関する同氏の解説を以下にまとめた。
韓国と日本の両国がこの地域への米国の関与を補うような形で戦略的地平を拡大している今、この訪問は時宜にかなっていた。尹大統領は、南北朝鮮関係に重点を置いた文在寅(ムン・ジェイン)前政権の政策から転換し、技術・サプライチェーン、気候問題、健康安全保障等の領域において、より広範な地域や世界における韓国の役割を受け入れることを明言している。尹大統領が日米豪印(Quad)との協力強化や経済安全保障策における米国との協調を求める背景には、中国に対する同氏のより懐疑的な見方がある。今回発表された米韓首脳共同声明は、朝鮮半島を超えた米韓のパートナーシップに基づく包括的な戦略同盟の構築を強調している。
今回の訪問の目的の1つは、米国の経済的なリーダーシップを復活させることであった。IPEFには、米国はリーダーの地位を中国に譲らないということ、また、サプライチェーンのボトルネック、インフラのグリーン化、デジタル技術の普及といった重要問題に対する実用的な解決策を提供するための主催力(convening power)を有していることを伝える意図がある。
IPEFは交渉の柔軟性とスピードを重んじており、参加国は以下の4つの柱から協力する分野を選択できる。
IPEFは発足時に東南アジア諸国(シンガポール、ブルネイ、マレーシア、タイ、ベトナム、フィリピン、インドネシア)とインドを含む国々が参加を表明したことは予想を上回る結果であった。IPEF参加国の合計の国内総生産(GDP)は世界全体の40%を占める。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部