台湾の中央研究院(Academia Sinica)は、同院の研究チームが、自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder:ASD)に関連する変異について、シナプスタンパク質の液-液相分離(liquid-liquid phase separation:LLPS)を変化させることに加え、シナプス刺激により制御される亜鉛の量がASDに関連するシナプスタンパク質の液体からゲルへの相転移を調整することを初めて明らかにした。5月20日付け発表。研究成果は学術誌 Nature Communications に5月13日付で掲載された。
ASDの重要な特徴であるシナプス変性(synaptopathy)は、LLPSや、ASDに関連するシナプスタンパク質の転移の異常に関連する可能性がある。 ASDに関連するタンパク質の1つ「コルタクチン結合タンパク質2(Cortactin-binding protein 2:CTTNBP2)」は自己集合による凝縮体を形成し、樹状突起スパインでのSHANK3の共縮合(co-condensation)を促進する。
亜鉛はCTTNBP2に結合してより高次構造の集合を促進し、結果として、CTTNBP2凝縮体の安定性とシナプス保持(synaptic retention)を強化する。ASDに関連する変異は凝縮体の形成とCTTNBP2のシナプス保持を変化させ、マウスの社会的行動に障害をもたらすが、これらは亜鉛の補充により改善することが示された。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部