医療従事者→南アジア等で不足 看護師→豪州等で不足 米ワシントン大学研究所

米国のワシントン大学医科大学院(University of Washington School of Medicine)の保健指標評価研究所(IHME)が、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(universal health coverage:UHC、全ての人々が必要な保健医療サービスを受けられること)を全世界で達成するには、さらに4,300万人以上の医療従事者が必要であるという研究結果を発表した。この論文は5月23日付で医学誌 The Lancet に掲載された。医療従事者の不足はサハラ以南のアフリカ、南アジア、北アフリカ・中東で特に深刻であった。

研究チームは現在の医療従事者(医師、看護師・助産師、歯科医療従事者、調剤従事者)の数をUHCの「実効的サービスカバレッジ指数(effective service coverage index)」の目標値達成に必要な最低水準と比較し、2019年時点で世界の看護師・助産師は3,060万人、医師は640万人不足していると推定した。

さらにこの研究は、地域により医療従事者の密度に10倍以上の差があることを明らかにした。1万人あたりの医師数はサハラ以南のアフリカでは2.9人、中央ヨーロッパ、東ヨーロッパ、中央アジアでは38.3人であった。

同様の格差は看護師・助産師数においてもみられ、1万人あたりの看護師・助産師数はオーストラレーシア(オーストラリア、ニュージーランド等)で152.3人、ラテンアメリカ南部では37.4人であった。1990~2019年の間に医療従事者数は着実に増加しているものの、なお相当な数が不足していることが分かった。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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