ジェスチャーと手の動き...数学の成績向上に一役 豪州など国際チームが研究

AsianScientist - 中国、イラン、オーストラリアの研究者たちは、ジェスチャーと手の動きは、生徒が数学を学び、理解し、成績を上げるのに役立つと発表した。

学校での学習は、特に小学生にとっては困難なことがある。そして、数学など抽象的な科目を学ぶ場合は、とんでもない難しさに直面することがある。方程式を理解しようとしても奇妙な記号やギリシャ文字を見ると、数学は近づき難く学ぶのが難しいという印象を受け、数学への興味は低下するかもしれない。早いうちに何とかしなければ、小学生の数学的リテラシーは低くなるだけだ。これはオーストラリアなどの一部の国ではすでに起こっている。経済協力開発機構(OECD)加盟国の生徒らの学習到達度調査 (PISA) ランキングによると、オーストラリアの子供たちは韓国、シンガポール、英国などの国と比較して、数学的リテラシーをなかなか養うことができない。

この調査では、2003年から2018年にかけてオーストラリアの子供たちの計算能力が低下したことも示された。

しかし、中国、イラン、オーストラリアの研究者チームは、手の動きとジェスチャーを使用して、数学の基本的な概念を学び理解を高める方法を提案した。

Integrative Psychology and Behavioural Science 誌に掲載されたこの論文は、いくつかの心理学的概念と過去の行動学研究を取り上げ、手の動きやジェスチャーを使って高次の認知的関与を高める効果的な学習について紹介している。この論文は、これらの行動概念と知見に基づき、図形、体積、数量などの基本的な数学的概念を小学生に教える際に転用・置換する方法を提案する。

論文の共著者である南オーストラリア大学のフェルナンド・マルモレホ・ラモス(Fernando Marmolejo-Ramos) 博士は、数学を学ぶことは新しい言語を学ぶことに似ていると述べる。マルモレホ・ラモス博士は、南オーストラリア大学の「学習の変化および複雑性センター (C3L)」の研究員である。彼は Asian Scientist 誌に対し、詳しく説明してくれた。

マルモレホ・ラモス博士によると、言語は3つの要素で構成されている。まず、口頭によるコミュニケーションがある。これは言葉を使って何かを説明し意思疎通を行うことである。次に、パラ言語がある。声の調子と高低を使用して感情を伝え、これにより、より詳しいニュアンスを会話に加えることができる。最後に、キネシクスがある。これは顔の表情、体の動き、ジェスチャーなどのことであり、言語によるコミュニケーションの中で意味を分かりやすくしたり、感情を強めて伝えたりするのに役立つ。

マルモレホ・ラモス博士は「人間はいつも3つの言語要素を使っています。そうしないと、他人とのコミュニケーションを行えません」と言い、「人は相手の言うことを聞き、相手のジェスチャーと顔の表情を見て、相手が考えていることを全体的に理解する必要があります。そこで、この3つの要素をすべて備えた言語の考え方を、数学の理解に転用することを想像してみてください」と問いかける。

この研究は、単語や数字を使用して概念を説明するのではなく、概念をもっと深く理解するために触覚的な学習方法を使用して多くの記憶の手がかりを作成することを提案する。図形を例にとると、鉛筆やストローなどの物を生徒に掴ませ、それを見せて説明しながらその形を描いたり構築させたりすれば、新しい図形の概念を学び、理解する上で役に立つことがある。

ところで、数学は図形だけを学ぶのではない。マルモレホ・ラモス博士は、統計などといった難易度の高い内容については、ジェスチャーや触覚学習を使用して理解し、教えることは難しいことを理解している。しかし、彼はそれが不可能ではないことも指摘する。「課題を作るときは、慎重に検討する必要があります。魅力的な課題を作るためには、人は自分が教えている概念を本当に理解しなければならないからです」(同博士)

チームの次のステップは、この提案された教授法を実験するために、さまざまな国の子供たちの複数のグループで実際にこの提案された教授法を実施して実験することである。「次のステップの大きな目標は、さまざまな背景で実験することです」とマルモレホ・ラモス博士は話している。

(2022年07月06日公開)

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