台湾大学(NTU)は、ボトムアップ式の「合成生物学(synthetic biology)」手法を用いて非対称細胞分裂の設計原理を探索した同大学の生物学者による研究を紹介した。5月11日付け発表。この研究に関する2本の論文は、学術誌 Nature CommunicationsとACS Synthetic Biology に掲載された。
非対称細胞分裂は、あらゆる生物の細胞発生における基本的な仕組みである。これまでトップダウン式の研究手法によって関与する物質や相互作用が明らかにされてきたが、その根本的な原則は、進化の目的であるロバストネス(頑健性)を確保するための自然冗長性(natural redundancy)により複雑化し、理解が困難になることがあった。
そこで研究チームは、2021年に Nature Communications に発表した研究で、大腸菌において、異種多量体(heterologous oligomeric)タンパク質がロバストな極性化した足場として働き、非対称的にRNAポリメラーゼを機能させることを示した。続けて同年に ACS Synthetic Biology に発表した研究では、同じ足場を用いて、TEVプロテアーゼのリクルートメント(recruitment)を介した極性化したタンパク質の分解により、同様の細胞内非対称を構成できることを証明した。
2つ目の研究は、タンパク質の局所的な存在量を動的に制御するためのより優れた設計につながる可能性がある。また、局在化したタンパク質の合成に加え、局在化した分解が、細胞内のシグナル伝達を極性化する手段として機能することの根拠を提示した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部