糖尿病診断で高速・正確なナノ電子バイオセンサーを開発 台湾大学

台湾大学(NTU)の研究チームは、SELEX(systematic evolution of ligands by exponential enrichment)法を用いて新たなアプタマーを分離し、糖尿病診断用の高精度でコスト効率に優れたバイオセンサーを開発した。5月11日付け発表。研究成果は学術誌 Nano Today に掲載された。

馬偕記念医院(Mackay Memorial Hospital)の医師、さらに陽明交通大学(NYCU)の理論計算チームとの共同開発。

このアプタマー「AptGP」は、糖化したヘモグロビンβ鎖のN末端(glycated peptide:GP、糖化ペプチド)との結合による複合体の形成を通じて、ヒトの血中の糖化ヘモグロビンA1c(HbA1c)に強い親和性を持つ。HbA1cは慢性糖尿病の合併症における血糖コントロールの状態を示す指標などとして用いられている。

AptGPとポリエチレングリコール(polyethylene glycol:PEG)をシリコンナノワイヤ電界効果トランジスタ上で共に修飾(comodify)したバイオセンサー(PEG:AptGP/SiNW-FET)は、血液試料中のHbA1cにより引き起こされる電界の変化に応答し、高感度・高速・正確なHbA1c値の検出を可能にする。測定結果は従来のキャピラリー電気泳動法で測定したHbA1c濃度と一致しており、ポイントオブケア診断に利用できる可能性もある。

この新たなバイオセンサーはごく微量の血液試料のみを用いて検査を実施できる。将来的には、異なるさまざまなプローブ分子をこのトランジスタ上で修飾することで、1滴の血液から多種類の疾患を診断することも夢ではなくなるかもしれない。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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