年4億人感染―フラビウイルス治療の新薬開発へセンター開設 米デューク-NUS医学部

フラビウイルスに対処する創薬を目的とし、米デューク大学とシンガポール国立大学(NUS)が共同運営するデューク-NUS医学部(Duke-NUS Medical School)は、米国の医薬品大手ジョンソン・エンド・ジョンソン(Johnson & Johnson:J&J)と共同で、J&Jのサテライトセンター「J&J Satellite Center for Global Health Discovery」をシンガポールの同医学部内に立ち上げた。6月21日付け発表。

ジカウイルスやデングウイルス等のフラビウイルスがもたらす脅威を軽減するための創薬を目的としている。J&Jにとって、この種のサテライトセンターがアジア太平洋地域に開設されるのは初めて。両者は研究や臨床橋渡し(translational)に関するDuke-NUSの専門性とJ&Jの業界経験を生かしてフラビウイルス関連疾患に対する創薬研究を加速し、人々の生活を向上させることを目指す。

フラビウイルスは重い疾患や死亡を引き起こすが、現在、このウイルスに特異的に作用する抗ワクチン治療薬は存在しない。世界では年間4億人の人々がフラビウイルスに感染しており、その被害の大半はアジアで生じている。特にデング熱の発生頻度は過去20年間で大幅に増加しており、シンガポールでも2020年と2022年に立て続けに大規模なアウトブレイクが発生している。

Duke-NUSとJ&Jの研究者らは、既に同センターでの研究を開始している。センターの主任科学者であるDuke-NUSのキッティ・チャン(Kitti Chan)博士は、「このセンターの使命は、最先端の分子ウイルス学や、候補薬をモデルシステム内で評価する革新的な生体内(in vivo)アプローチを用いて、デング熱やほかのフラビウイルス関連疾患に対する創薬パイプラインを構築することだ」と語った。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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