学歴で高齢者の機能障害と慢性疾患の割合に差異 韓国とシンガポールで調査

米スタンフォード大学ショレンスタインアジア太平洋研究センター(APARC)は7月5日、同センターの客員研究員シンシア・チェン(Cynthia Chen)氏による、高齢化社会の政策策定にとって重要な社会レベルの差異に着目した研究を紹介した。

高齢化が進む社会では、集団ごとに微妙に異なるニーズを考慮する必要がある。シンガポール国立大学(NUS)の助教授で2022年からAPARCで活動しているチェン氏は、シンガポール政府や米国立老化研究所(National Institutes of Aging)の支援を受け、人口統計学的・経済学的・社会的な変化が将来の介護負担や資金調達ニーズ、最適な資源配分に及ぼす影響を研究している。

性差や社会経済学的差異は、国が高齢者を支援できる能力に影響する。特に女性の平均余命が男性より長いことにより、高齢期におけるニーズには性差が生じる。チェン氏は、経済協力開発機構(OECD)加盟国の高齢化における性差を数値化することを目標としている。

チェン氏は、社会経済学的特性に関して、韓国とシンガポールのデータを使用して、加齢と機能障害の関係に関する差異を研究している。この2国の高齢化の速度は同様であるが、機能障害と慢性疾患の増加速度は異なっており、これには食事や生活様式、文化的な差異を含む多数の要因が関わっている可能性があるとチェン氏は示唆した。特筆すべき点として、高学歴の高齢者は、機能障害と慢性疾患を有する割合が低くなると予測されており、この予測は韓国とシンガポールの両方で、男女に関わらず一貫していることが分かった。

チェン氏は「国内総生産(GDP)等により、高齢者の依存度(old-age dependency)を示す時代遅れの指標から移行しなければならない。これらの指標は社会的機能に影響を及ぼす重要な要因の多くを無視している」 と述べ、より微妙な差異を反映した包括的な高齢化指標の必要性を強調している。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

上へ戻る