中医学の理論で新型コロナの予防薬を開発 台湾・陽明交通大学

台湾の陽明交通大学(NYCU)は、中国伝統医学(中医学)に基づき、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防に効果的な調合薬を開発した。5月12日付発表。この研究の成果は学術誌 Frontiers in Pharmacology に掲載された。

中医学に基づいた、COVID-19の予防薬を発表する関係者ら

同大学の伝統医学研究所(Institute of Traditional Medicine:ITM)が開発したこの「コロナウイルス除去調合薬(Coronavirus-clearing concoction)」は、感染の確率を低下させ、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に関連する症状を緩和することが証明された。

ITMのシュー・チュンファ(Hsu Chung-hua)教授は、中医学の理論はじめ、2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)の感染拡大防止における経験を基に、レンギョウ(Forsythia suspensa)やコガネバナ(Scutellaria baicalensis)等の生薬を調合してこの薬を開発した。

開発された調合薬

作用機序の説明
(提供:いずれもNYCU)

この調合薬は台湾でワクチンの大規模接種が開始される前に、応募した1,000名以上の医療従事者に投与された。そのうち、参加者の90%が後日受けた調査に対し、1週間服用した後に喉の痛み、咳、頭痛が改善したことを示した。

作用機序を調べるために行われた動物実験では、この薬を2日間投与した結果、動物の体内でSARS-CoV-2の受容体である膜タンパク質ACE2とTMPRSS2の発現量が有意に低下した。さらに細胞実験により、この薬が、SARS-CoV-2が細胞と結合する機会を減らすだけでなく、SARS-CoV-2の複製を阻害することも分かった。

研究チームは、この調合薬はワクチンに取って代わることはできないが、SARS-CoV-2を減弱させることで、補助的な予防・防御策として使用できるとしている。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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