小胞体ストレスに反応したゴルジ体(golgi)の機能を解明 台湾

台湾大学(NTU)は、同大学のファンジェン・リー(Fang-Jen Lee)教授が率いる研究チームが、小胞体(endoplasmic reticulum:ER)ストレスがゴルジ体(golgi)の逆行輸送(Retrograde Transports)に及ぼす影響を解明したと発表した。この研究成果は学術誌Cell Reportsに掲載された。

ERとゴルジ体は、タンパク質の折りたたみ、修飾、輸送を助ける主要な細胞小器官(organelle)である。ERのタンパク質折りたたみ能力が損なわれると、ERへのストレスを軽減するためのunfolded protein response(UPR、または小胞体ストレス応答)が生じる。ERストレスは細胞死を引き起こし、糖尿病やがん、免疫機能の変化、アルツハイマー病などの神経変性疾患につながることもあるため、ERストレスとUPRの生物学的機序を解明することは、これらの疾患の治療戦略の開発に役立つ可能性がある。

同チームは以前の研究で、ERストレスがゴルジ体で低分子量GTPアーゼArl1を活性化し、Arl1エフェクターであるゴルジンタンパク質Imh1のゴルジ体リクルート(Golgi recruitment)を生じさせることを発見していたが、ERストレスが誘導するArl1-Imh1経路の機能は明らかになっていなかった。

今回、チームは出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)をモデル生物として用い、ERストレスがゴルジ体へのエンドソームタンパク質の逆行輸送を障害することを初めて発見した。ERストレスが生じると、ゴルジ体への逆光輸送で主要な役割を果たすGARP(Golgi-associated retrograde protein complex)複合体の機能が不全となり、SNAREタンパク質Snc1とTlg1のゴルジ体へのリサイクリング輸送が阻害される結果、これを補うためにArl1とImh1のゴルジ体リクルートが強化される。さらに、Imh1は、ERストレスに反応してリン酸化され、Snc1とTlg1のリサイクリング輸送を維持する機能を示すことも明らかになった。

チームは、将来的にはゴルジ体への逆光輸送がERストレスの負荷を緩和する仕組みに焦点を当てたいと述べている。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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