分子動力学に基づきペプチドを設計へー世界初のデータベース開発 台湾

台湾の清華大学(NTHU)の研究チームが、分子動力学に基づいて新規ペプチドを設計するための、世界で初めてのデータベースを開発した。この研究の成果は学術誌 Nature Communications に発表された。

近年、ペプチドを利用した医薬品や健康補助食品への関心が高まっている。ペプチドを構成するアミノ酸は免疫系に効果を及ぼすため、糖尿病等の治療等に用いられている。しかし、アミノ酸の組み合わせが膨大な数に上ることが、ペプチド医薬品の開発の妨げとなっていた。

NTHUのヤン・リーウェイ(Yang Lee-wei)教授はこの問題を解決するため、既存のタンパク質データベースから170万のαヘリックスペプチドを抽出し、分子動力学のコンピューターシミュレーションを用いてこれらのペプチドのパターンを同定した。微生物学を専門とするラン・チュンユ(Lan Chung-yu)教授らの実験により、コンピューターで選択されたペプチドは病原菌のカンジダ・アルビカンスや有害な細菌に対する抗菌作用を持つことが確認された。

このデータベースは治療効果を持つペプチドの設計だけでなく、ピロリ菌の検出等を通じて疾患の診断にも利用できる可能性がある。さらにチームは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)への効果を持つペプチドを同定するためのアルゴリズムも開発した。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

上へ戻る