米スタンフォード大学ショレンスタインアジア太平洋研究センター(APARC)は、同センターのカレン・エグルストン(Karen Eggleston)氏らの研究により、台湾の病院システムにおいて、質に基づく支払い(pay-for-performance:P4P)制度が良好な健康アウトカムをもたらしたことがわかったと発表した。9月6日付け。研究成果は同センターが発行するジャーナル The European Journal of Healthcare Economics に掲載された。
糖尿病等の非感染性疾患の医療費が増大するなか、P4Pは経済的なインセンティブと患者アウトカムの向上を連動させる方法の1つとして導入されているが、その効果に関するエビデンスは一様でない。
APARCのアジア保健政策プログラム(Asia Health Policy Program)を率いるエグルストン氏らは、このような不確実性を解消するため、P4Pプログラムの費用と便益をより明確にすることを試みた。
台湾では2001年よりP4Pを導入している。エグルストン氏らはある大規模な地域病院の患者を対象に臨床的指標や使用状況(utilization)、支出に関する患者レベルのデータを収集し、死亡登録データと組み合わせてP4Pプログラムの費用と便益を評価した。結果は、糖尿病診療のためのP4Pプログラムは、40,084~348,717ドルの正味価値(生存年延長の価値から医療費を引いた金額)をもたらしたというものであった。
論文の著者らは「質の改善の価値から支出を差し引いた値がプラスになったという心強い結果は、P4Pプログラムのさまざまな結果を示した文献に新たなエビデンスを追加している」と述べた。
通常診療に関する質で調整した価格指数の変化を推定したP4Pプログラムの分析は、この研究が初めてとなる。エグルストン氏らが開発した正味価値を評価するためのモデルは他国や異なる状況にも適用可能であり、医療システムの研究者に、インセンティブに基づく診療の選択肢について理解するための手段を提供している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部