国立陽明交通大学(NYCU)は9月8日、同大学と台北栄民総医院(Taipei Veterans General Hospital)の共同研究チームが、糞便中の細菌が肝細胞癌(hepatocellular carcinoma:HCC)に対する免疫療法の治療効果を予測できることを示したと発表した。この研究は2022年の欧州肝臓学会(European Association for the Study of the Liver)の「best study」(肝癌部門)に選ばれ、研究成果は学術誌 Journal for ImmunoTherapy of Cancer に掲載された。
新たな癌治療の選択肢である免疫療法は、手術で切除することができない癌を有するHCC患者にとって特に有益である。しかし、HCCに関する免疫療法の治療効果を効果的に予測できるバイオマーカーは現在存在しない。
NYCUのイーシャン・ファン(Yi-Hsiang Huang)教授が率いる肝臓癌研究チームは台北栄民総医院で免疫療法を受けたHCC患者の糞便検体を採取し、健康な人々の糞便検体と比較して次世代シーケンシングにより腸内細菌叢を解析した。
HCC患者の糞便は主にバクテロイデス門(Bacteroidetes)とファーミキューテス門(Firmicutes)の細菌で構成されていた。免疫療法により癌が悪化した患者の糞便には主にバクテロイデス門の Prevotella 9 という細菌が認められたのに対し、免疫療法に良好な反応を示した患者の糞便には、主にファーミキューテス門の Lachnoclostridium と Veillonella が認められた。
全体として、良い腸内細菌叢を持つHCC患者は、免疫療法に良好な反応を示し、生存率も高かった。
(提供:いずれもNYCU)
今回の研究成果は、臨床医が、免疫療法を受ける肝癌患者の腫瘍縮小効果(tumor response)や生命予後を非侵襲的な方法で予測するための手がかりになると期待される。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部