台湾・中央研究院(Academia Sinica)は、同院Agricultural Biotechnology Research Center のチェンスン・ホー(Cheng-Hsun Ho)博士が率いるチームが、遺伝子工学を用いて、植物生体内の硝酸イオン(nitrate)を検出できる蛍光共鳴エネルギー移動(fluorescence resonance energy transfer)バイオセンサーを初めて開発し、植物における硝酸イオンの濃度と分配(distribution)の関係を明らかにしたと発表した。10月20日付け。研究成果は学術誌 Science Advances の2022年10月号に掲載され、表紙にも選ばれた。
硝酸イオンの吸収と分配は、植物が生きていく上で極めて重要な働きである。硝酸イオン吸収の上流調節(upstream regulation)と、さまざまな細胞における下流での硝酸イオンへの反応はこれまでによく研究されてきたが、細胞レベルの硝酸イオンの空間的・時間的分配を高解像度で視覚化することはできなかった。
このセンサーは、時間・環境条件に応じた個々の細胞内の硝酸イオンの濃度と動的な変化をモニタリングできる。この研究手法は、商品作物中の窒素利用効率に関する新たな研究領域の創出につながる可能性がある。
ホー博士はこのツールについて「工学者や農家が作物収量を増加させるための手助けとなる可能性がある。気候変動により植物へのストレスが増大しているため、このことは特に重要になる」と語った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部