台湾の中央研究院(Academia Sinica)の生物多様性研究センター(Biodiversity Research Center)のウェンシュン・リー(Wen-Hsiung Li)博士らが、生物の窒素固定の起源と進化に関する従来の仮説を覆す研究を発表した。10月14日付け。この研究成果は学術誌 Molecular Biology and Evolution に掲載された。
窒素は地球上のあらゆる生命体にとって不可欠な元素であるが、大気中に存在する窒素を取り込む(固定する)ことができるのは、一部の細菌や古細菌のみである。
これまでの研究では、窒素固定は最初に古細菌で進化し、真正細菌へと転移(transfer)したと仮定されていた。しかし窒素固定を行う真正細菌は窒素固定を行う古細菌よりもはるかに多く、生態的地位においてより多様である。そこでリー博士の研究チームは、窒素固定は最初に真正細菌で進化し、その後、古細菌へと転移したとする「真正細菌先行(bacteria-first)」説を立てた。
リー博士らは3万以上の原核生物ゲノムを解析し、解析した全ての原核生物ゲノムで窒素固定に関与する6つの遺伝子を同定した。これらの遺伝子を用いて複数の系統樹を再構築した結果、真正細菌先行説を強く支持する知見が得られたという。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部