パンデミック対応にみるアジア太平洋諸国の民主主義と公衆衛生 米ブルッキングス研究所

米ブルッキングス研究所(Brookings Institute)は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックに対してアジア太平洋の民主主義社会が行ってきた、個人のプライバシーを優先しながらテクノロジーを活用して公衆衛生を守るための取り組みを、韓国、台湾、インド、オーストラリア(豪州)、日本の研究者が執筆した論文に基づき評価した。

韓国、台湾、インドの論文は、パンデミック中のテクノロジーの利用とデータプライバシーに焦点を当てた。

  • 韓国の政治経済学者ジュン・パク(June Park)氏は、国内のデータガバナンスが個人データの使用に関する国際的な規制に優先する現実を考察した。
  • 台湾の法律学者フェンジェン・ジーン・ツァイ(Feng-Jen Jean Tsai)氏は、ビッグデータや接触追跡技術を含む、国家レベルのパンデミック対応におけるデータとテクノロジーの利用について検討した。
  • ジェンダー公正とデジタル権を専門とするインドのラディカ・ラダクリシュナン(Radhika Radhakrishnan)氏は、デジタル上での健康監視が同国の地域社会や個人にもたらした影響を検討した。

豪州と日本の論文は、テクノロジーや革新的な公共政策を含む両国のパンデミック対応に関する広範な事例研究を提供した。

  • 豪州の医療経済学者スティーブン・ダケット(Stephen Duckett)氏は、同国政府のパンデミック対応にみられた透明性・責任説明・公平性の問題を指摘した。
  • グローバルヘルス・ガバナンスの専門家である早稲田大学の勝間靖教授は、日本が行った、渡航の制限や新技術の導入、個人の行動変容の推進といった医薬品によらない介入(nonpharmaceutical interventions:NPI)について論じた。

5つの論文が提示した政策面での推奨事項には、以下の共通のテーマがみられた。

  1. 1. 説明責任と透明性を通じた国民の信頼の維持
  2. 2. 公平性やプライバシー等の価値観を優先する方法の検討
  3. 3. 将来に向けた法律面の準備

2022年12月発表

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

上へ戻る