台湾大学(NTU)の分子・細胞生物学研究所(Institute of Molecular and Cellular Biology)のシュエピン・(キャサリン)チュ(Hsueh-Ping [Catherine] Chu)博士の研究チームが、テロメア伸長に関与し、新たながん治療の標的となりうる機構を明らかにした。同大学が広報誌Highlightsの2023年2月号で公表した。研究成果は学術誌Nature Communicationsに掲載された。
テロメアの長さの維持は、がんや老化の過程と密接に関連している。テロメアを伸長させる酵素としてテロメラーゼが知られているが、一部のがん(ALTがん)ではこの酵素に依存しないテロメア伸長機構「Alternative lengthening of Telomeres (ALT)」が働いている。ALTには切断により誘導される(break-induced)複製が関与しているが、この機構を開始する仕組みは明らかにされていなかった。
研究チームは、ノンコーディングRNAの「TERRA」が形成するRループ構造(TERRA Rループ)と、DNAを切断する酵素「XPF」が、ALTを生じさせる因子(driver)であることを発見した。
この研究は、XPFを標的とした新たなALTがんの治療につながる知見を提供している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部