除草剤が炎症性腸疾患(IBD)の環境因子と判明 台湾と米ハーバード大が共同研究

台湾の陽明交通大学(NYCU)は3月7日、同院と米ハーバード大学医学大学院(Harvard Medical School)との学際共同研究により、除草剤が腸炎を悪化させる危険因子であることが発見されたと公表した。炎症性腸疾患(IBD)に及ぼす環境因子の効果を明らかにした画期的な研究であり、研究成果は学術誌 Nature に掲載された。

NYCU生物医学情報学研究所(Institute of Biomedical Informatics)のユーチャオ・ワン(Yu-Chao Wang)准教授は、ハーバード大のチームと協力し、ゼブラフィッシュを用いた研究に基づき、IBDを悪化させる化合物の予測モデルを作成した。さらに米国環境保護庁(EPA)のToxCastデータベースにこのモデルを適用して、より多くの化合物を同定した。

同定された最も影響力の強い20種類の化合物のうち、半数以上が農業に関する化合物であった。チームはさらなる実験により、除草剤として使用されているプロピザミド(propyzamide)が、腸の安定性を維持するダイオキシン受容体を阻害し、T細胞と樹状細胞による免疫応答を誘導して、IBDの悪化を引き起こすことを確認した。

芝のスポーツ場や庭を頻繁に利用する人々はプロピザミドに暴露するリスクがある。ワン博士のチームは現在、除草剤により生じるIBDを緩和するナノ粒子とプロバイオティクスを開発している。

(提供:いずれもNYCU)

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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