台湾大学(NTU)の臨床検査学・医療バイオテクノロジー科(Department of Clinical Laboratory Sciences and Medical Biotechnology)のカンイ・スー(Kang-Yi Su)博士の研究チームが、敗血症の治療法につながる新たな機構を発見した。同大学が広報誌 Highlights の2023年2月号で公表した。研究成果は学術誌 eLife に掲載された。
敗血症は感染に対する生体反応により起こる生命を脅かす状態であり、集中治療室の患者の最大の死因となっている。同チームは、敗血症の死亡率を低下させるにはまず、臓器不全と敗血症性ショックの主要な原因となる免疫制御の不均衡状態が生じる理由を解明する必要があると考えた。
チームは、熱ショックタンパク質40の一種であるHLJ1が、自然免疫と適応免疫の両方で重要な役割を果たすことを明らかにした。HLJ1を欠損させたマウスでは、リポ多糖(LPS)によりエンドトキシンショックを誘導した際の臓器損傷がより少なく、インターフェロンγ(IFN-γ)による死亡率もより低くなった。また、HLJ1の欠損は、LPSを投与したマウスの血清中インターロイキン12濃度の低下とナチュラルキラー細胞のIFN-γ産生の抑制に寄与し、結果として生存率を向上させた。
論文の筆頭著者であるウェイジャ・ルオ(Wei-Jia Luo)博士は今回の研究について、「HLJ1が新たな敗血症治療や免疫調節療法の分子標的となる可能性を示した」と語った。同チームは引き続き、HLJ1を調整する新薬候補の同定に向けて取り組むとしている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部