有機強発光で世界記録を樹立、1,000ナノメートルに到達 台湾

台湾大学(NTU)化学学科(Department of Chemistry)のピータイ・チョウ(Pi-Tai Chou)教授が率いる研究チームが、過去に同チームが打ち立てた840~930ナノメートルの有機強発光(organic strong light emission)の世界記録を塗り替え、1,000ナノメートルに到達した。この研究成果は、2022年10月10日付のNature Photonicsに掲載された。

1,000~1,700ナノメートルの近赤外線(NIR)波長域は、一般に第二赤外領域(NIR(II))と呼ばれ、深部イメージングや光ファイバー技術において重要な波長である。しかし、有機分子の励起状態と基底状態のエネルギー差が小さいと励起子-振動カップリングが強くなり、励起子が熱的に基底状態にまで緩和されるという「エネルギーギャップ則」が、NIR(II)発光材料の一般用途への応用を阻んできた。

チョウ博士の研究チームは、清華大学(NTHU)のユン・ジー(Yun Chi)教授、台湾海洋大学(NTOU)のウェンイー・ホン(Wen-Yi Hong)教授、加速器放射線研究センター(NSRRC)のウェイゾン・チョアン(Wei-Tsung Chuang)博士との共同研究において、励起子-振動カップリングの影響を減少させることでエネルギーギャップ法則の制約を打破することに成功し、有機ELで内部量子収率21%での1,000ナノメートルの発光と外部量子収率4.2%という2つの世界記録を達成した。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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