世界初、サンゴの黒帯病の決定因子を解明 台湾と日大が共同研究

台湾の中央研究院(Academia Sinica)は4月27日、同院の研究チームと日本大学の研究者の共同チームが世界で初めて、サンゴの黒帯病(black band disease: BBD)の微生物組成が病原性の重要な決定因子であることを明らかにしたと発表した。この研究成果は、学術誌NPJ Biofilms and Microbiomesに掲載された。

黒帯病のサンゴ
(提供:和田直久)

BBDはここ数十年世界のサンゴ礁で報告されており、BBDによって死滅するサンゴが増えている。BBDは、単一の病原体によって引き起こされるものではなく、複数の微生物がバイオフィルムを形成し、それぞれが特定の層に所在して互いに協力してサンゴ組織に侵襲し、最終的にサンゴを死に至らしめる。このバイオフィルムが黒いことにちなんで黒帯病という名前が付けられた。多くの研究により、BBDの進行速度(すなわち病原性)は環境要因の違いがあることが分かっているものの、バイオフィルム内の細菌群集がどのように病原性に関わっているのか分かっていない。

同院の生物多様性研究センター(Biodiversity Research Center)のタン・センリン(Tang Sen-Lin)博士と和田直久(Wada Naohisa)博士(現在:東京大学)、日本大学の間野伸宏(Mano Nobuhiro)博士らの共同チームは、細菌叢解析によって進行速度が早くなるにつれ硫黄酸化細菌(Arcobacteraceae)が増え、別グループの硫黄酸化細菌(Rhodobacteraceae)が減少することを突き止めた。さらにArcobacteraceaeがバイオフィルム内の中層部に局在しながらBBDの病原性に関わっていることを示唆した。

この研究結果は、BBDの進行に伴って変化する微生物の組成とその局在場所の違いが、BBDの病原性と密接に関係することを示している。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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