アミロイドを利用、新たな省エネの海水淡水化技術開発 台湾

台湾の陽明交通大学(NYCU)は5月11日、生命科学学科・遺伝子科学研究所(Department of Life Sciences and Institute of Genome Sciences)のシーイー・シュ(Sheh-Yi Sheu)教授が率いる研究チームが、アルツハイマー病の原因となるアミロイドを利用して海水を100%脱塩する新たな淡水化方法を開発したと発表した。この研究の成果は、国際学術誌Smallに掲載された。

この海水淡水化法では、不溶性の繊維状タンパク質であるアミロイドが塩イオンをブロックする性質を利用する。アミロイド蛋白で構成されるナノチューブを使い、タンパク質の膜表面の電位差を巧みに活用して塩イオンの通過を阻止しつつ水分子を一方向に移動させて分子モーターを形成することにより、外部からエネルギーを供給しなくても海水淡水化効果を実現する。

(出典:いずれもNYCU)

シュ教授によると、現在主流の淡水化技術である逆浸透では、海水から塩分を分離するためにモーターを利用することから、大量の電力と大規模な設備を必要とし、スケールメリットを達成しにくい。アミロイドを用いた海水の濾過は、効果的かつ省エネルギーの海水淡水化の新たな方向性を示している。

研究チームの試算では、10平方センチメートルのアミロイドナノチューブで構成される濾過膜で、1日当たり2.5トンの淡水を生成することができる。これは既存の逆浸透法での淡水生成量の200倍以上に相当する。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

上へ戻る