台湾の中央研究院(Academia Sinica)は6月1日、同院の研究グループが、脱ユビキチン化酵素のTRABIDが、がん治療に使われる免疫チェックポイント阻害剤への腫瘍の反応性を高める有望な標的となりうることを突き止めたと発表した。研究成果は、Nature Communicationsに掲載されている。
PD-1/PD-L1やCTLA4を標的とする免疫チェックポイント阻害剤は、その高い持続性により、現在のがん治療にパラダイムシフトをもたらしている。しかし、反応を示すのはごく一部のがん患者に限られているため、免疫チェックポイント阻害剤の反応率を高める治療戦略を開発する必要がある。
同院のルイファ・チェン(Ruey-Hwa Chen)博士の研究グループは、抗腫瘍免疫の抑制において脱ユビキチン化酵素のTRABIDが果たす重要な役割を特定した。機械的には、TRABIDは有糸分裂において上方制御され、有糸分裂の細胞分裂を抑制する。TRABIDによる遺伝的又は薬理学的阻害は、腫瘍に対する免疫学的監視を促進し、マウスを使った前臨床がんモデルにおいて、抗PD-1治療に対する腫瘍の反応性を高める効果を示している。臨床的には、ほとんどの固形がん種におけるTRABIDの発現は、インターフェロンのシグネチャーや抗腫瘍免疫細胞の浸潤と逆相関している。こうしたことから、今回の研究は、抗腫瘍免疫における腫瘍内在性のTRABIDの抑制的な役割を明らかにし、TRABIDが固形腫瘍を免疫療法に反応しやすくするための有望な標的となりうることを示している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部