台湾大学(NTU)は6月1日、台湾大学公衆衛生学院(NTU College of Public Health)や台湾大学附属病院(NTUH)等の複数の機関の学際的な共同研究により、劣悪な室内換気環境や低濃度でも浮遊粒子状物質に長期間さらされることで、認知機能障害のリスクが有意に高まることを突き止めた。研究の成果は、2023年2月にEnvironmental Researchに掲載された。
高濃度の大気汚染への曝露と高齢者の認知症との関連は徐々に明らかにされているものの、屋内と屋外の二重の大気汚染が認知症に及ぼす影響については、さらなる解明が必要とされている。
公衆衛生学院のユンジン・チェン(Yen-Ching Chen)教授とNTUHのレンハオ・チェン(Jen-Hau Chen)教授の主導によるこの研究では、6種類の屋外大気汚染物質―微小粒子(PM2.5)、粗大粒子(PM2.5-10)、粒状物質(PM10)、オゾン(O3)、二酸化窒素(NO2)、二酸化硫黄(SO2)―が認知機能に与える影響を評価する「複数汚染物質(6汚染物質)」モデルを世界で初めて提案した。
また、先行研究の乏しい室内汚染物質への曝露については、流体力学の原則に基づいた室内環境の「換気スコア」を開発し、窓やドアの開閉度や空気循環装置の使用状況に基づいて室内空間内の空気の流れを評価した。
この研究から得られた結果は、劣悪な室内空気や、環境大気環境基準以下の低濃度であっても屋外大気汚染に長期間さらされることで、高齢者の認知障害や認知症のリスクが高まることを示している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部