物性物理学における異常金属状態の謎を解明 台湾と米ブルックヘブン国立研究所

台湾の陽明交通大学(NYCU)電子物理学科(Department of Electrophysics)のチョンホウ・チョン(Chung-Hou Chung)教授率いる研究チームが、数十年にわたり物性物理学において謎となってきた異常金属状態を解明することに成功した。米ブルックヘブン国立研究所(BNL)との共同研究。台湾の国家科学技術委員会(NSTC)が8月16日付けで発表。NSTCも長期的な支援を行ったという。研究成果はNature Communicationsに掲載された。

通常の金属は、低温領域で冷却すると電気抵抗が温度の2乗で減少し、超伝導になる(いわゆる「フェルミ液体」)。しかし、過去30年にわたり、さまざまな新しい量子材料において、通常金属とは異なる金属の振る舞い(「異常金属」と呼ばれる)が発見されている。最近では、不安定な「量子臨界点」に近い希土類超伝導体や銅酸化物高温超伝導体で、「プランク金属(Planckian metal)」状態と呼ばれる、さらに変わった異常金属状態が発見された。プランク金属は、直線的に変化する散乱率を示し、その散乱係数はプランク定数に逆比例する。しかし、こうした異常金属状態のメカニズムはほとんど分かっていない。

チョン教授が主導した今回の研究では、強相関系の希土類超伝導体におけるプランク金属状態の謎を、理論と実験の組み合わせによって初めて明らかにした。実験結果により、プランク金属状態は実際には、量子臨界点近くの量子臨界状態であることが確認された。研究チームはまた、プランク金属状態と、強相関系の超伝導体における量子臨界現象とのその関係を説明する理論を初めて提示した。

米国の研究機関と共同で進められた今回の研究は、国際協力における台湾の基礎科学研究チームのリーダーシップを示しており、基礎科学研究における台湾と米国との協力の新たな節目を刻むものである。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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