台湾の中央研究院(Academia Sinica)の生物多様性研究センター(Biodiversity Research Center)の研究チームが、フジツボ類の幼生と成体が分泌するセメントタンパク質を同定し、その進化の過程を明らかにした。9月27日付発表。この研究成果は、Molecular Ecologyに掲載された。
固着性の甲殻類であるフジツボ類は、幼生期からセメントを分泌し始め、成体になるまで継続的にセメントを分泌して永久固着する。しかし、フジツボ類の幼体と成体のセメントタンパク質の起源や進化の過程については、詳しく解明されていない。
中央研究院のベニー・K.K. Chan(Benny K.K. Chan)氏が率いる研究チームは、幼生のセメント腺のマイクロダイセクション、トランスクリプトーム、ショットガン・プロテオミクス、免疫組織化学検証を通じ、ウミガメに付着するカメフジツボ(Chelonibia testudinaria)の幼生のセメントタンパク質30種類と成体のセメントタンパク質27種類を同定することに成功した。その結果、セメントタンパク質の大部分は、成長段階とフジツボに固有のものであることが判明した。
検証の結果に基づき、研究チームは、フジツボの幼生と成体のセメント分泌系は別々に進化したものであり、両者とも既存の遺伝子のコ・オプションと、系統特異的なセメントタンパク質遺伝子のde novo形成、複製、機能的分岐によって生じたと結論付けた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部