台湾の陽明交通大学(NYCU)のムーファ・ヤン(Muh-Hwa Yang)副学長率いる研究チームが、頭頸部がん細胞にフェロプトーシスを誘導する方法を発見した。10月3日付発表。この研究成果は、Advanced Scienceに掲載された。
ムーファ・ヤン(Muh-Hwa Yang)副学長
免疫チェックポイント阻害剤は、進行した頭頸部がんをはじめ、さまざまな腫瘍の治療に顕著な効果を示している。しかし、かなりの割合の患者が、免疫療法に対して限定的な反応しか示さない。
この課題に対処するため、ヤン副学長率いるチームは詳細な調査に着手した。頭頸部がん症例の検体の分析により、フェロプトーシスのシグナルと組織内の腫瘍炎症マーカーとの間に強い相関関係があることを突き止めた。この発見によれば、フェロプトーシスは、免疫反応を引き起こす細胞の死滅メカニズムと考えることができる。この研究は、頭頸部がんに対するフェロプトーシス治療と免疫調節の基礎となるメカニズムを明らかにし、がん細胞にフェロプトーシスを誘導することが免疫療法の有効性を高めることを示した。
このほか、研究チームは、安立璽榮生醫股份有限公司(Elixiron Immunotherapeutics Inc.)と共同で、臨床治療に適用できる可能性のある二重機能の免疫抗体の開発に関する研究結果を発表した。
研究チームは、腫瘍内の免疫細胞の多重染色やシングルセルゲノムシーケンス(single-cell gene sequencing)などの広範な分析を通じて、免疫療法に対する腫瘍の反応を強化し、腫瘍微小環境を改変する戦略に焦点を当てた。抗体の開発に加え、研究チームは、この融合タンパク質薬剤を既存の免疫チェックポイント阻害剤(PD-1抗体)と併用することで、免疫療法の有効性をさらに高められることを実証した。
(出典:いずれもNYCU)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部