台湾の中央研究院(Academia Sinica)の植物・微生物学研究所(Institute of Plant and Microbial Biology)のレイスン・マー(Lay-Sun Ma)博士らが、菌類病原体とその宿主植物との厳しいせめぎ合いのメカニズムを解明した。10月11日付発表。この研究成果は、Nature Communicationsに掲載された。
マー博士らは、トウモロコシ黒穂病を引き起こす病原菌Ustilago maydisがどのように宿主に感染して繁殖するかを明らかにした。この過程には、2つの構造的に保存されたタンパク質が関わっている。一つは、植物の防御に関係するPR-1という発病機序関連のタンパク質であり、もう一つは菌類の毒性に関係するPR-1様(PR-1L)タンパク質である。
PR-1Lタンパク質を生成することによって、U. maydisは、有毒な植物フェノール類に対する耐性を得る。この病原菌はまた、トウモロコシのプロテアーゼCatB3を乗っ取ってPR-1Lから模倣ペプチドを放出し、植物のPR-1由来の免疫反応を引き起こすペプチドに対抗する。このプロセスは、植物の免疫力を抑制し、U. maydisのコロニー形成を成功させる。
今回の発見は、菌類の作物への寄生と、病原菌とその宿主におけるPR-1LとPR-1タンパク質の共進化ダイナミクスに関する知識の不足を埋めるものであり、菌類病原体と戦う作物の戦略的改良を可能にする。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部