すい臓がんの前がん病変を促進、KRAS遺伝子の働き解明 台湾

台湾の中央研究院(Academia Sinica)ゲノム研究センター(Genomic Research Center)の研究チームは、発がん性遺伝子であるKRAS遺伝子が、すい臓がんの前がん病変を促進する機序を解明した。1月25日付発表。この研究成果は、Advanced Scienceに掲載された。

この研究結果は、KRAS遺伝子がすい臓がんの前駆体の発生を促進する機序を初めて解明したものであり、すい臓がんの早期診断や治療のための新たな戦略の開発に役立つことが期待される。

(出典: Academia Sinica)

同センターのウェンフワ・リー(Wen-Hwa Lee)博士とチュンメイ・フー(Chun-Mei Hu)博士率いる研究チームは5年にわたり、遺伝子改変マウスKrasG12D/+の解剖のためにすい臓全体を観察する先進的な3次元組織学的方法の適用に取り組んだ。この研究の結果、初期段階のすい上皮内腫瘍性病変(PanIN)細胞の90%以上がムチンの1つであるMuc4遺伝子の過剰発現を示し、活性化した線維芽細胞に囲まれていることが確認された。

研究チームはさらに、発がん遺伝子であるKRAS遺伝子と、介在するMuc4遺伝子との相互作用を解明した。このダイナミックな相互作用により、隣接する線維芽細胞が変化してすい臓の発がん現象を助長する環境が形成される。このような相乗効果を通じて、PanIN細胞の増殖に有利な微小環境が確立され、前がん病変に対する感受性が高まることが明らかになった。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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