細菌を利用したがん治療アプローチを開発 台湾

台湾の中央研究院(Academia Sinica)の研究チームが、がんの治療アプローチとして細菌を利用することで、がん細胞に対する微小環境を調節できることを突き止めた。1月31日付発表。この研究成果は、EMBO Molecular Medicineに掲載された。

(出典:Academia Sinica)

腫瘍微小環境(TME)には、がん細胞の増殖に有利な特異的選択圧(differential selective pressure:DSP)が存在し、TMEにおけるがん細胞の優位性を逆転させるには、1種類だけの治療法では不十分なことが多い。

生物医学研究所(Institute of Biomedical Sciences)のユン・モウ(Yun Mou)博士率いる研究チームは、TMEに細菌を外来種として導入し、腫瘍根絶のためにDSPを変化させる組み合わせ治療戦略の研究に取り組んできた。

研究の結果、化学療法薬や食事指導介入と組み合わせることで、細菌によるがん抑制の効果を強化できることが明らかになった。

さらに、マウスを使った実験では、免疫原性の薬剤(オキサリプラチン)と細菌の併用により相乗効果が得られ、TMEにおける先天性免疫と適応免疫の両方が活性化して、腫瘍の完全寛解と持続的な抗腫瘍免疫学的記憶がもたらされることが確認された。ただし、非免疫原性の薬剤(5-FU)と細菌の併用では、このような相乗効果は見られなかった。

この研究結果は、細菌療法と免疫原性化学療法を組み合わせることで、免疫抑制性TMEに対して抗がん免疫を促進できることを示唆している。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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