ハワイ大学マノア校インド太平洋地域研究センター(University of Hawai'i at Mãnoa Center for Indo-Pacific Affairs)は2月7日、東南アジアにおける海底ケーブルネットワークについて見解を公開した。この中で同地域における海底ケーブルの価値が高まる一方、脆弱性も増していると警告した。
東南アジアは、その地理的位置から、世界中の海底ケーブルの重要な接続点となっている。シンガポールだけでも、この地域を東西に結ぶ約40本の海底ケーブルのハブである。急増する帯域幅需要に対応するために、2025年までに東南アジアとその周辺でおよそ10件の大規模な海底ケーブルプロジェクトが予定されている。
一方で、この地域は、地理的に地震や海底火山活動といった自然災害の影響を受けやすく、砂の浚渫(しゅんせつ)によるケーブル損傷のリスクも高い。また、ケーブルの修理能力という問題も抱えている。こうした中、国連海洋法条約(UNCLOS)の規定に関する東南アジア諸国間の解釈の相違により、ケーブル保護に対して一貫したアプローチを取ることが難しいことも問題となっている。
この地域における米中対立や地政学的な緊張関係は、海底ケーブルの建設プロジェクトに影を落としている。海底の覇権をめぐる米中競争は、インターネットインフラの分断化の危険をはらんでおり、東南アジア諸国は米国主導のデジタル環境と中国主導のデジタル環境のどちらかの選択を迫られる可能性がある。
同センターではこうした現状を踏まえ、海底ケーブルを含む分野横断的な技術問題を議論するための省庁間関係者、業界トップ、外交政策・安全保障の実務者からなるマルチステークホルダー協議会の創設を提言。そのような場でインフラ、ソフトウエア、部門横断的な技術の応用に関するトピックについて意見交換を行うことで、地政学的トレンドとその影響に関する包括的な協議が可能になると指摘した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部