RNF43遺伝子変異の膵臓がんに、MEK阻害剤とWnt阻害剤の併用が効果 台湾で研究

台湾の衛生研究院(National Health Research Institutes)は3月4日、同院の研究者らのチームが、RNF43遺伝子変異の膵臓がん細胞がMEK阻害剤とWnt阻害剤の併用に対して高い感受性を示すことを発見したと発表した。この研究成果は、Advanced Scienceに掲載された。

本研究は、膵臓がん治療に新たな戦略を提供し、個別化精密医療に貢献することが期待される。

近年、次世代シーケンシングの応用により、膵臓がんにおいてK-RAS、TP53、CDKN2A、SMAD4など複数の遺伝子に変異が見られることが明らかになっている。膵臓腫瘍には、他にも遺伝子異常が存在することが多い。しかし、膵臓がんの発生と進行におけるこれらの変異頻度の低い遺伝子の正確な機能については、まだ解明されておらず、これらの変異遺伝子を標的とすることで治療効果が向上するかどうかも不明である。

台湾・衛生研究院のホン・ウェンチュン(Wen-Chun Hung)特別研究員と高雄医学大学(Kaohsiung Medical University)のチェン・リーツォン(Chen Li-Tzong)主任教授が率いる研究チームは、Wntシグナル伝達経路における重要な調節遺伝子であるRNF43に着目し、RNF43が変異した膵臓がん細胞がMEK-MAPK経路阻害剤に対して高い感受性を示すことを発見した。MEKの上流にある調節タンパク質の広範囲にわたるスクリーニングにより、研究チームはRNF43の新しい標的タンパク質としてB-RAFを特定し、RNF43がB-RAFを調整する分子機序を解明した。

また、MEK阻害剤とWNT阻害剤を併用したところ、RNF43が変異した膵臓がん細胞に対して相乗的な細胞毒性効果を示し、動物で有意な腫瘍縮小を引き起こした。がんゲノムアトラス(The Cancer Genome Atlas)データベースの臨床データの分析からも、RNF43変異の膵臓がん患者においてB-RAFタンパク質が有意に増加していることが確認され、研究チームの分析結果が裏付けられた。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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