インドの選挙活動でソーシャルメディアの役割が拡大 米シンクタンクが報告

米国シンクタンク「カーネギー国際平和基金(Carnegie Endowment for International Peace)」のインドの政策シンクタンク、カーネギー・インディア(Carnegie India)は3月7日、ソーシャルメディアがインドの選挙において重要な役割を果たすようになっている一方、対面型の選挙活動に代わるものではないとする論文を公開した。

インドでは、世界最安水準のモバイルデータ料金の後押しもあってスマートフォンが急速に普及しつつあり、2026年にはスマートフォンユーザーが10億人に達すると予想されている。こうした中、インドの政党は選挙運動に、ソーシャルメディアやメッセージアプリ「WhatsApp」を利用する傾向が強まっている。

一方で、インドの有権者は依然として戸別訪問や選挙集会といった対面型の選挙活動を重要とみなしていることから、政党は引き続き、多額の費用のかかる大規模な対面型の選挙活動にも力を入れている。

インドの近年の選挙運動におけるソーシャルメディア利用を分析した結果、政党が戦略的に、オンラインと対面型の選挙活動との間の「コンテンツ相補性」を利用していることが明らかになった。ソーシャルメディアは、対面型の集会に関する情報を広く発信するのに役立つ一方、対面型の集会はソーシャルメディアにコンテンツを提供する。この相補性は、集会に集まった群衆の規模に関するコンテンツに最も明確に現れる。大人数の動員に成功した集会に関する写真や動画をソーシャルメディアで流せば、有権者の認識にポジティブな影響を与えることができる。

政党はまた、このコンテンツ相補性を、党内の結び付きを構築・維持するためにも利用している。対面型の党イベントに関連するオンラインコンテンツは、党の上層部、職員、草の根の党員との間のオンライン上のやりとりを促進する働きをしている。

デジタル革命に後押しされた技術的変化がインドの選挙活動と政党組織に影響を与える中、各党はITやソーシャルメディア部門に積極的に投資している。しかし同論文は、オンラインでの選挙活動は、従来の対面型の政治活動に取って代わるものや補助的なものとしてではなく、相補的なものとして活用するのが最善と結論付けた。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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