アジアの人為起源エアロゾル、大西洋南北循環への影響を解明 国際研究チーム

米国科学振興協会(AAAS)のオンラインニュースサービス「Eurekalert!」は3月13日、米エネルギー省(DOE)傘下のパシフィック・ノースウェスト国立研究所(PNNL)、中国海洋大学、独マックス・プランク気象研究所の国際研究チームが、アジア上空のエアロゾルが大西洋南北循環(AMOC)に与える影響を明らかにしたと発表した。この研究成果は、Nature Communicationsに掲載された。

AMOCは、大西洋内で温かい水を北へ、冷たい水を南へと循環させる複雑な海流システムであり、2004年に初めて観測されて以来、数千件の科学論文で取り上げられている。これまでの研究では、温室効果ガスの増加と、北米およびヨーロッパ上空に存在する人為起源エアロゾルが、AMOCの減速の一因であることが示されている。こうしたエアロゾルには、輸送、石炭燃焼、製造による汚染に由来するものが含まれる。

今回の研究では、気候モデルのシミュレーションを用いて、アジアからの人為起源エアロゾルの排出量増加が、太陽熱を遮って地球の気候を冷却することにより、いかにAMOCの動きを減少させているかを示すことに成功した。これまでの研究では、人間の活動によって生じたアジアのエアロゾルの影響は明らかではなかったため、これらのエアロゾルがAMOCを減速させているという研究チームの発見は重要な意味を持つ。

研究チームは、この研究の結論として、アジアの人為起源エアロゾルの排出量を減らすことは、現地の大気汚染を減らすだけでなく、AMOCの安定化にも役立つと述べた。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

上へ戻る