T細胞のUFMylation、がん免疫療法の新たな可能性を開く 台湾・中央研究院

台湾の中央研究院(Academia Sinica)は3月19日、同院の研究チームがT細胞におけるUFMylationの生理的役割を解明し、UFMylationのE3リガーゼであるUFL1ががん治療の標的となりうることを明らかにしたと発表した。この研究成果は、Molecular Cellに掲載された。

UFMylationは、ユビキチン様の翻訳後修飾であり、さまざまな生物学的プロセスを制御している。UFMylation経路の調節異常は、がんをはじめとするヒトの疾病につながる。しかし、T細胞におけるUFMylationの生理的役割については、まだ不明な点が多い。

生物医学研究所(Institute of Biomedical Sciences)のユールー・リー(Yu-Ru Lee)博士率いる研究チームは、T細胞内のUFL1をコンディショナルノックアウト(cKO)したマウスが、効果的な腫瘍制御を示すことを報告した。

シングルセルRNAシーケンス解析により、UFL1 cKOマウスでは細胞毒性を有する腫瘍浸潤CD8+ T細胞が増加していることが示された。さらに、UFL1は、PD-1のUFMylationを促進して、PD-1のユビキチン化と分解に拮抗する。また、AMP活性化型タンパク質キナーゼ(AMP-activated protein kinase:AMPK)は、UFL1をThr536でリン酸化し、PD-1のUFMylationを阻害してその分解を引き起こす。特に、T細胞からUFL1を除去すると、PD-1のUFMylationが減少することで、PD-1が不安定化し、CD8+ T細胞の活性化が強化される。その結果、腫瘍を有するUFL1 cKOマウスは、抗CTLA-4免疫療法に対してより良い反応を示した。

(出典:Academia Sinica)

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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