世界17の山岳地帯で深刻な温暖化を確認 台湾・中央研究院

台湾の中央研究院(Academia Sinica)は3月28日、生物多様性研究センター(Biodiversity Research Center)のシェンフェン・シェン(Sheng-Feng Shen)主任研究員率いる国際研究チームが、世界の山岳地帯における等温線の移動速度と生物学的反応の複雑な研究を通じ、地球温暖化が山岳生態系を著しく圧迫していることを明らかにしたと発表した。この研究成果は、Natureに掲載された。

台湾の成功大学(NCKU)と台湾大学(NTU)、米国のハーバード大学、フランスのピカルディ・ジュール・ヴェルヌ大学の研究者が参加したこの研究では、熱力学原理を用いて、等温線の垂直移動を高い精度でマッピングした。その結果、アラスカ・ユーコンの乾燥地帯からスマトラ島北部の高地まで世界の17の山岳地帯において、等温線が年間11.67メートルを超える速度で上昇していることが明らかになった。この速度は、これまでの見積りをはるかに上回っており、これらの高地に固有の種に重大な脅威をもたらしている。

この研究はまた、乾燥した山岳地帯と湿潤な山岳地帯との大きな違いも明らかにした。乾燥地域では、空気中の水分が少ないため地表面の温暖化速度が早い。対照的に、湿潤地域では、水分の存在が地表面の温暖化を緩やかにする傾向がある。しかし、湿度によって気温減率が低下することで、同じ温度に到達するのに必要な距離が長くなり、一部の山岳地帯では気候速度(climate velocity)が加速される。このメカニズムは、これまで見過ごされてきた。

今回の研究によって得られたデータは、生物多様性ホットスポットへの影響を緩和するための戦略的介入の策定にも役立つものとなる。

(出典:いずれもAcademia Sinica)

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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