氷河期分析、CO2による温暖化の最悪シナリオが低下 米ワシントン大学

米国科学振興協会(AAAS)のオンラインニュースサービス「Eurekalert!」は4月17日、米ワシントン大学の主導で行われた直近の氷河期の分析により、二酸化炭素(CO2)濃度の上昇による地球温暖化の最悪シナリオが起こる可能性は低いことが示されたと発表した。この研究成果は、Science Advancesに掲載された。

従来の地球温暖化の最悪シナリオでは、CO2の濃度が倍増した場合、地球の平均気温が最大で5℃上昇するとされていたが、今回発表された論文では、この数値が4℃に引き下げられた。なお、CO2濃度の倍増により地球の平均気温が2℃上昇すると想定する最良のシナリオや3℃上昇を想定する最も起こりうるシナリオについては、変化はないとされた。

研究チームは、温室効果ガスの濃度が低かった太古の地球の気温が現在よりどれだけ低かったかを調べることで、温室効果ガスの濃度が上昇した現在の気候がどれほど温暖化するかを推定できると考え、最終氷期最盛期と呼ばれる2万1,000年前の時期に焦点を当てた。当時の地球の平均気温は現在より6℃低く、大気中のCO2濃度は現在の半分以下だった。

分析のため、研究チームは新たな統計モデリング技術を開発し、先史時代の気候記録と地球の気候のコンピューターモデルを組み合わせて、最終氷期最盛期の天候をシミュレートした。

その結果、北米大陸の大部分が氷に覆われていた時期は、氷床が夏の太陽光を陸地に反射させて地球を冷やしていただけでなく、風のパターンと海流の変化によって北太平洋と大西洋上の雲が多くなり、さらに多くの太陽光を反射することで氷河の地球冷却効果を増幅していたことが明らかになった。

この分析結果は、CO2が氷河期の気温に与えた影響は、従来推定されていたよりも小さいことを示唆している。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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