東アジアモンスーン、オゾン層破壊物質を成層圏に運ぶ 米報告

米国科学振興協会(AAAS)のオンラインニュースサービス「Eurekalert!」は4月23日、気候温暖化によって強まった東アジアモンスーンに乗って、これまで報告されていた2倍以上の濃度の大量の極短寿命オゾン層破壊物質が東アジア上空の成層圏にまで上昇していることが新たな研究から明らかになったと発表した。

この研究は、米国立科学財団の国立大気研究センター(NSF NCAR)と米航空宇宙局(NASA)が主導したもので、2022年にアジアで実施された大規模な現地調査「アジア夏季モンスーン化学・気候影響プロジェクト(Asian Summer Monsoon Chemistry and Climate Impact Project:ACCLIP)」で得られた観測データを利用して行われた。分析の結果、ジクロロメタン(CH2Cl2)やクロロホルム(CHCl3)など5種類の非常に短寿命の塩素化合物の濃度が高いことが明らかになった。

長寿命のオゾン層破壊物質については、1987年のモントリオール議定書で段階的廃止が定められ、成層圏オゾン層は回復傾向にある。一方、同議定書では極短寿命のオゾン層破壊物質の製造と使用の継続を制限しておらず、その排出量が近年、南アジアと東アジアで急増している。この地域は、地球温暖化によって最も強まると予想される東アジアモンスーンの直下に位置しており、モンスーンの強力な上昇気流と短寿命の塩素化合物の排出量増加が相まって、予想外に大量の化学物質が成層圏に巻き上げられたとみられる。

研究の主執筆者であるNSF NCARの科学者ローラ・パン(Laura Pan)氏は、「この地域で汚染物質の影響が観測されることは予想していたが、実際に観測された極短寿命オゾン層破壊物質の量の多さは意外だった。成層圏オゾンの回復と気候変動の予測には、これらの化学物質の潜在的影響を考慮する必要がある」と述べた。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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