米国シンクタンク「カーネギー国際平和基金(Carnegie Endowment for International Peace)」は5月15日、台湾とマレーシアとの関係を分析した報告書を発表し、正式な国交はないものの、二国間には長年にわたる活発な経済的・社会的つながりがあり、その傾向がさらに加速しているとの見解を示した。
報告書によると、台湾とマレーシアの貿易の流れは1990年代半ばから着実に伸びており、台湾政府が「新南向政策」を打ち出した2016年以降、さらに加速している。2017年から2018年の間に二国間貿易は22.1%拡大し、2021年時点で台湾はマレーシアにとって第5位の貿易相手国、マレーシアは台湾にとって第7位の貿易相手国であった。
技術に強みを持つ台湾と天然資源や労働効率に強みを持つマレーシアは、経済的な補完関係にある。また、世界の半導体市場で6割近いシェアを占める台湾と、シェア7%で世界第6位の半導体輸出国であるマレーシアは、この分野でも関係を強めている。台湾のフォックスコン(鴻海精密工業)は2022年に、電気自動車向け(EV)向けのチップ製造工場の建設地にマレーシアを選んだ。マレーシアにおける台湾の半導体事業のプレゼンスは、半導体のグローバルサプライチェーンが抱える地政学的リスクに対するヘッジとして機能する。
同報告書はまた、ハイテク分野以外にも、世界のハラル市場への参入を目指す台湾にとって、人口の6割をイスラム教徒が占めるマレーシアは格好のパートナーとなりうるとしている。2023年時点で1000社を超える台湾企業がハラル認証を取得していたが、その8割がマレーシアのハラル認証機関からの認証だった。さらに台湾の観光業界は、マレーシア人やその他の観光客に向けたキャンペーンを積極的に行っており、過去2年連続でイスラム協力機構加盟国以外の国・地域の中で最もムスリムに優しい旅行先のトップ3にランクインしている。
最後に同報告書は、こうしたさまざまな面における台湾とマレーシアの結びつきは、次の頼清徳政権下でも続いていく可能性が高いと述べている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部