台湾の中央研究院(Academia Sinica)は6月11日、同院の研究チームが、台湾北東部に位置する亀山島(Kueishan Island)の浅海熱水噴出孔付近の海洋生息環境を2年にわたって追跡し、熱水噴出孔が周辺の環境に与える影響を明らかにしたと発表した。この研究成果は、Limnology and Oceanography Lettersに掲載された。
(出典:Academia Sinica)
同院の細胞個体生物学研究所(Institute of Cellular and Organismic Biology)のユンチェ・ツェン(Yung-Che Tseng)博士らの研究チームは、同研究所の海洋研究ステーション(Marine Research Station)を利用して、熱水噴出システムの海洋物理化学的側面、生物学的側面、サウンドスケープの側面を含む包括的な研究戦術を確立し、周辺のサンゴ礁生態系を含む複数の生息環境を継続的に調査した。
調査の結果から、噴出域の近くで発生する浅い地震が熱水放出の周期的な変化を引き起こし、噴出期間中にpHレベルや溶存無機炭素、硫化物濃度が大きく変動することが明らかになった。こうした物理化学的条件の変動は、周辺の海洋生息環境のサウンドスケープに影響を与える。注目すべき点として、地質学的な活動期間によって環境特性に顕著な違いが見られ、熱水噴出孔の影響の複雑さが浮き彫りとなった。さらに、遠く離れたサンゴ生態系も、サウンドスケープの季節的な変化を通じて、間接的に熱水活動の影響を受けている可能性があることが判明した。
今回の研究成果は、生命の起源や、熱水噴出孔システムによって促進された初期の地球の進化に関する洞察を提供するだけでなく、極限海洋生態系のモニタリングと保全に関する新たな視点を提供している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部