「肺チップ」開発の第一人者、台湾内外で注目を集める 陽明交通大学

台湾の陽明交通大学(NYCU)は7月3日、「臓器チップ(Organ-on-chip:OoC)」分野のパイオニアとして高い評価を得ている医用生体工学研究所(Institute of Biomedical Engineeringのグアンユー・チェン(Guan-Yu Chen)教授の取り組みを公開した。

グアンユー・チェン(Guan-Yu Chen)教授
Photo from Hao-Yun Peng and Zong-Han Lyu / ZDunemployed studio
(出典:NYCU)

OoCは、マイクロ流体チップ上でヒト細胞を成長させて、人体の複雑な微小生理学的変化を再現するもので、臨床段階における動物実験への依存度を大幅に削減することを可能にし、コストと時間の節減を可能にする。

チェン教授が特に力を入れているのは、肺チップ(Lung-on-a-chip)であり、現在この分野の世界的な第一人者として台湾内外で注目を集めている。同教授が率いるチームが開発した肺チップは、人体の肺組織や吸入試験に対する反応を模倣することができ、吸入された薬剤の溶解度や臓器分析などのデータの評価に役立つ。

チェン教授の主導で2021年に設立されたAnivance AIチームは2024年、OoCの加工、標準化、検証のための収益性の高い産業エコシステムの構築を目指して、技術系スタートアップへと移行した。同チームは、米国の膵嚢胞性線維症財団(Cystic Fibrosis Foundation)やモレキュラーデバイス(Molecular Devices)社、モデルナ台湾(Moderna Taiwan)、台中栄民総医院(TCVGH)など、国内外の10近くの医療・研究機関と協力しており、年内に第3世代の高精度な肺チップの発表を予定している。

チェン教授は、OoCは動物福祉への貢献に加え、精密医療を向上させ、ビッグデータやAIを活用した製薬開発の効率化や患者リスクの軽減に役立つと考えている。将来のOoCの価値について同教授は、「体内環境を模倣して人体でのテストと同じ結果を得られるかどうかだけでなく、半導体センシングやAI技術と統合し、製薬会社により正確な薬物治療や開発戦略を提供できるかどうかがより重要になる」と語った。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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