PTSDの新たな治療法の可能性、恐怖記憶の形成に関わる脳メカニズムを発見 台湾

台湾の陽明交通大学(NYCU)は8月20日、国際的な共同研究チームがマウスの恐怖記憶の形成に関わる新たな脳メカニズムを発見したと発表した。この研究成果は、Cell Reportsに掲載された。

マウスが音を聞いて電気ショックを受けた後の凍りつく恐怖反応のリアルタイム解析
(出典:NYCU)

脳の外皮質の下には恐怖に関連する感情を制御する中枢扁桃体という領域が存在することが知られている。しかし、これまでの研究では、この領域内の特定のニューロンが恐怖記憶を形成し、恐怖体験を想起する際の行動反応を調節しているかどうかは明らかにされていなかった。

生命科学院(College of Life Sciences)のチェンチャン・リエン(Cheng-Chang Lien)教授率いる研究チームは、デンマークのオーフス大学とインスブルック医科大学の研究チームと共同で、遺伝子改変マウスを用いて、さまざまな恐怖体験によって活性化された中枢扁桃体のニューロン(主にソマトスタチン・ニューロン)に標識を付けた。これらの標識を付けたニューロンを抑制すると、マウスはさらに恐怖を示すようになったという。

この研究を通じ、恐怖体験がマウスの扁桃体の抑制性ニューロン群を活性化し、恐怖記憶に対する過剰反応を防いでいることが明らかになった。

リエン教授は、「ほとんどの神経科学者は、脳内の興奮性ニューロンが記憶の保存と反応をどのように処理するかに注目しているが、この研究では、抑制性ニューロンもマウスの恐怖記憶反応の調節に重要な役割を果たしていることを実証し、より複雑な神経メカニズムを明らかにした」と研究の意義を強調した。

今回の研究を通じて得られた知見は、恐怖による悪影響を軽減する道を開き、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の新たな治療法をもたらす可能性がある。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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